美は見出すもの、育てていくもの

「ただによい景色や美しい花を見た時にだけ、僅かに美を感ずることの出来るような頑なな心でなしに、どういうものの中にも秘されている美を見ることが出来るような深い心を培ってやりたい」

自由学園創立者 羽仁もと子

 

四年に一度、幼稚園から最高学部(大学部)まで、すべての学園生がキャンパス中を舞台に作品を繰り広げる自由学園美術工芸展

 

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「生活即教育」という自由学園の教育理念は美術教育にも生きています。生活の中に美を見出し、その美を生活、そして社会で実現していく。単なる表現にとどまらず、体験を通した思考や感情の動きを芸術として爆発させる。そんな強いアートが自然に満ちたキャンパス内にのびのびとはじけていました。

 

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幼児生活団の作品。うずらや鳩を卵から育てる体験が子どもたちに強い印象を与えているようで、鳥をモチーフとした作品が多くありました。特に鳩を放つ瞬間を描いたものは驚きと喜びにあふれていました。

 

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初等部(小学校)の作品。歴史ある校舎の壁だってキャンパスになります。体育館の中は、子どもたちの感性を通して再現された大自然。その生命力には圧倒されました。

 

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男子部の作品。「価値のないものから価値を生み出し、感動を与える」ということが大きなテーマになっていたそうで、材料は徹底的に廃材です。男子部は自分が学ぶ机と椅子をつくるのですが、その端材をワイルドな額縁にしています。額縁といっても、枠をなしていないのが、彼らの激しさを表現しています。影絵も息を呑む緊張感。廃材を照らす先には、まぎれもない美が映し出されていました。

 

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女子部は圧巻でした。繊細で大胆な心とからだが生み出す瑞々しいアートの数々は、どれだけ眺めていても飽きないほど。

 

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最高学部の作品たちからは、人間のもつ深みを感じました。自由学園の「自由」というのは、人に与えられた可能性を限りなく高め、社会に生かすことだと思うのですが、その自由が花開くとこのような形になるのかと思わされました。いい意味でも底知れない人間の力を目の当たりにし、さあ、自分はどう生きていくのか、と深く内省させられたのでした。

 

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見る人の美意識を揺さぶってやまない自由学園の美術工芸展、次は四年後です。個人的には、オリンピックよりもずっと楽しみです。