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夏休み日記(2)いきなり育鵬社


三重から島根へ。



島根では、別荘で過ごします。別荘といっても、山深いところに住むおじさん、おばさんが冬に仮住まいをしたり、親戚が集まるのに使ったりする古い小さな家です。春、夏、秋はほとんど人が入らないので、着いたらまず掃除。窓を開け、布団を干し、掃き掃除、拭き掃除をし、冷蔵庫や食器棚の怪しい物たちを整理します。


バタバタしているところへ、おじさん登場。私たちが来るのを心待ちにしており、また移住してくることを切望しているおじさんです。やさしくてユーモアがあるとてもよい人なのですが、価値観がまるで戦前。なによりも国家と家系を大切にするお年寄りなのです。


「こんにちわぁ〜」とニコニコやってきて、まずは「この本はとてもいいことが書いてありますけぇ、みんなで読みんさい」と、育鵬社の本をゴソッと渡してきます。


おじさんによると、少年の頃に「ボクハ軍人ダイスキヨ」と叩き込まれ、その後陸軍士官学校に入って戦後を迎えているので、国家に尽くすことが人として何よりも大切にすべきことだと信じているそうなのです。


憧れのまま軍隊の学校に入り、実際に戦場に立つことないまま終戦を迎えたおじさん。殺し、殺されるような思いをすることもなかった。また、田舎なので空襲もなく、また飢えに苦しむこともなかった。そのため、戦争がロマンの結晶になったまま年を重ねているのです。そして玉音放送も直接は聞いておらず、戦争が終わったことも人から知らされたそうなので、敗戦のリアリティもないのでしょう。おじさんの頭の中では、まだ戦争は終わっていないようなのです。頭の中は一触即発。いつ中国、韓国、北朝鮮が攻めてくるやも知れん。本気でそう思っているようです。


そういうおじさんなので、安保法制などの動きについては議論の余地なし。何を言ってもニコニコと笑うだけです。なので育鵬社の本も、とりあえず受け取って、別荘の本棚に袋ごと置いておきました。きっとそれでも、来年また同じような本を渡してくるでしょう。