よみがえりのレシピ


今日で、2012年が終わります。今年は本業である広告の仕事はもちろん、ソーシャル系の活動でもとにかく動いた一年でした。過労で倒れたのも今年が初めてのことでしたね。そんなわけでバタバタしていたというのと、情報発信についてはTwitterFacebookで済ますことが多く、ブログの更新はあまりできませんでした。せめて年内に、と思い、今日はいま公開中の映画「よみがえりのレシピ」について書きます。


この映画、私はDVDでの試写会で拝見しました。「メシノタネ」というユニットをつくられた、greenzライターの磯木さんからのお誘いです。この映画のテーマは「在来種の野菜」。


もともと作物の種というのは、在来種の野菜や果物から人がつないでいくものでした。ところが高度成長期に入ってからは、種は採っておいて蒔くものではなく、買って使うものになりました。買うのはF1種という、一代きりの種です。できた作物についている種を蒔いても、うまく育たないんですね。F1種の作物は農薬に強く、同じような大きさや味になります。スーパーなどの流通に乗りやすいこともあって、大量生産・大量消費の社会が発展するとともにF1種が種の主流となっていきました。いつの間にか私たちの食べる野菜や果物は、世界で限られた種企業の支配下に置かれるようになっているんです。


もともと、人と作物は「お互いさま」の関係でした。人間は食糧として作物をいただき、そして作物は種を採ってまた育ててもらうことで命をつなぐ。人と植物がともに命をつなぎ合うのが、本来の農業のかたちなのです。F1種は、そのつながりを絶ってしまいます。農家の人は作物を生産するだけの人になり、作物はただ食べられるだけのものになる。そして、その関係をモンスターのような企業が支配している。この種の問題は、お金が命を支配する狂った現代社会のひとつの象徴といえます。


この映画には、社会が変わろうが、不経済であろうが、ひたすら「これを守っていかなければいけない」と、在来種の作物を育て続けているお年寄りたちが出てきます。そのひたむきさが希望です。今世紀初めに何千とあった在来種は、現在たったの約150種。この数少ない在来種を、私たちが守っていけるのか。食、そして私たちの未来はどうあるべきか。そんなことをちいさなひとつひとつの種から考えさせる映画でした。


よみがえりのレシピは、現在渋谷のアップリンクで上映中。全国でも順次公開されるそうです。ぜひ見に行ってみてくださいね。