2019.7.25〜26 白馬岳山行記

いつか登りたいと思っていた白馬岳。ずっと山地図を本棚に寝かせたままだった。手にとってみると、その山地図は2011年版。思い返すと、その年に行く計画を立てていたものの、台風の接近で断念したのであった。

以前は夏となると毎年アルプスの山に登っていたのだが、いっしょに登っていた友だちが海外に転勤になってからごぶさたになってしまっていた。最後に登ったのは2014年の鳳凰三山。いちど行かなくなると準備などがおっくうになってしまい、ズルズル行かない夏を重ねて5年目の夏、ついに白馬に行くことに。

重い腰を上げさせたのは息子だ。夏休みに白馬山荘でバイトしている息子に夫婦で会いに行こう、ということになったのだ。

2019年7月25日(木)東京→白馬八方

東京から白馬村へはレンタカーで。前日の夜に入り、車中泊して翌朝に登りはじめ、白馬山荘で一泊して帰るという計画だ。白馬村の八方に着いたのは夜の23時半。駐車場には、私たちと同じように車中泊しようとしている車がチラホラ。長い梅雨が明けきっておらず、台風もきているというので、夏山シーズンの割には少ない印象だ。

夫婦の予定と仕事の都合を調整し、息子のバイト期間の中で決めた2日間だ。カンタンにはずらせない。雨くらいなら登ろう、台風が来たら来たで考えよう。そんな勢いで前夜を迎えた。

白馬村は東京と比べるとずいぶん涼しい。窓を閉めていても車の中はちょっと暑いかな、という程度。蚊が入ってくるのは嫌なので、窓を閉めて後部座席を倒したラゲッジスペースで寝袋にくるまって就寝。割とぐっすり眠れた。学生時代には山の前は夜行列車が定番で、駅のホームで寝たこともあったなあ。それと比べりゃ極楽だ。

2019年7月26日(金)白馬八方→猿倉→大雪渓→白馬山荘

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空が明るくなってくる頃に目覚め、八方バスターミナルへ。猿倉までの料金事前に窓口で払い、バスに。座りながら、朝食を食べ(行儀悪くてすみません)、猿倉についたのは6時半ごろ。

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猿倉ではまず、登山届けを出す。大雪渓を渡って白馬山荘で1泊、翌日は栂池封建に下りるというコースで届けを出すと、係の人が「台風で栂池のロープウェイが止まるかもしれないので、ご注意ください」と。栂池に下りられないとなると、下りも大雪渓。しかも台風の中?勘弁してほしい。が、そのときはそのとき。今は雨も降っていないし、とにかく登ろう、ということになった。

大雪渓を超えるにはアイゼンが必要だ。レンタルできるかと思っていたら、買取りのみだった。土踏まずの部分に爪をつけるシンプルなアイゼンが1,000円。命には代えられないので、迷わず購入。

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準備運動をし、水を補給していざ山へ。なだらかな道を1時間くらい歩くと、白馬尻小屋に。その先はいよいよ大雪渓だ。無事を祈りつつ、アイゼンをガッチリと装着。先を見ると、とても7月とは思えない雪の斜面。そこを、たくさんの登山者と列をなして登っていく。登りというより、一歩一歩、雪を踏みしめるような感じだ。

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自分が滑らないことはもちろん、岩を転がさないように慎重に。岩を転がすと、ツルツル〜ッと音もなく滑っていくので、他の登山者を危険にさらすことになるのだ。長い長い大雪渓。終わったときには心底ホッとした。

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雪渓のあとは急な登り。ゴツゴツした岩の道を、高山植物たちに励まされながらひたすら登る。白馬岳頂上宿舎を過ぎると、今日の山行の目的地である白馬山荘が見える。一気に登り切ると、小屋番のTシャツを着た息子が迎えてくれた。到着は12時45分。6時間の登りだった。

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息子はそのとき大雪渓かき氷の担当で、登ってきた人に声をかけていた。「かき氷食べて行ってよ」とお願いされたが、日も出ていなくて寒かったので「先にお昼ご飯食べるわ」と逃げた。

受付を済ませて自炊コーナーで昼食。メニューは味付けいわしの缶詰を入れて炊いたごはんとインスタントのスープ。おなかもふくれて体もあったまったので、大雪渓かき氷をいただきに。あったまったとはいえ、寒い外で食べるのはキツいと言うと、スカイラウンジという喫茶室で食べてもよいとのこと。ぬくぬくの中でかき氷を食べられるのはうれしい。大雪渓かき氷は、たっぷりの練乳にフルーツをまぶしたかき氷。暑い日に登った人は、クールダウンできる上に疲れも癒されるので、かなり美味しくいただけるんじゃないかなぁ。

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かき氷を食べて小屋でのんびりした後は、早めの晩ご飯。晩ご飯の時間は受付のときに指定されるようになっている。指定されたのは17時45分。ちょっと早いけど、早く寝るからまあよしだ。山には何度も登っているけど、食堂でご飯をいただくのは実は初めて。いつもはセコく自炊なのです。ひょっとしたら、厨房で働いている息子の姿が見られるかも、という親バカ心で、初めての山食堂です。

その晩のメニューは、魚や揚げ物、サラダなどがプレートになったバランスのいい定食。トレイを持って並んでいると、厨房でおかずを並べている息子の姿が。あとで話を聞くと、その日は割と空いていたので、400人分くらいの食事で済んだそうだ。多いときには700人くらいの食事を用意するというから大変だ。 食事をいただいたテーブルには、私たち夫婦と、中年女性2人組、そして若いカップル。

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カップルの女子は小さなディズニーのぬいぐるみを持ってきていて、テーブルでぬいぐるみが主人公の写真を撮っていた。ぬいぐるみの旅行という体で、あちこちで写真を撮っているのだろう。

中年女性2人組は私たちと同じコース、そしてカップルは逆のコースでの行程だ。 逆のコースといえば、大雪渓を下るということだ。それはかなりハードだ。マジか。話を聞くと、当初は栂池から来て、また栂池に帰るというコースをとる予定だったそうだ。登りも下りも大雪渓を避ける予定だった、ということだ。ところが、栂池からの行程がとにかくハードで、命の危険を感じるレベルで二度と通りたくない、とのことだった。いや、むしろ大雪渓を下るほうが危ないのでは、と言ってみたものの、「岩と岩との間に大きな穴が空いていたりして、ありえないんですよ!」と興奮した様子。小屋の人からも初心者の方は下りの大雪渓はオススメしないと言われたそうなのだが、もうその道しか考えられない、という感じだった。不安だったが、大雪渓でぬいぐるみの写真を撮れる楽しみもあることだし、若いし、大丈夫かな。「とにかく慎重に下ってくださいね」と励ましておいた。

食後はスカイラウンジで生ビールを飲みながらのんびりし、親宛に絵葉書を書いて投函し、8時過ぎに就寝。

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2019年7月26日(金)白馬山荘→白馬岳→小蓮花山→白馬大池山荘→白馬乗鞍岳→栂池高原→白馬山荘

朝4時起床。もう日が昇りつつある。急がなきゃ。トイレで息子に会う。今から朝食の準備に取り掛かるらしい。ガンバレ!防寒着を着て体操をし、4時半に出発。20分ほどで白馬岳山頂に。雨は降っていないものの、ガスは多い。ぼんやりと、劔が見える、槍が見える。だんだんと空全体が明るくなってきて、雲の切れ間からご来光が。ピカーンというお日様じゃないけれど、生まれたての太陽の光はやっぱり好きだ。しかも、すぐ下には綿菓子のような雲海。

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絶景の朝をたっぷり楽しんだあと、小蓮花山へ。このあたりに来ると、空は青空に。ときおり高山植物を眺めながら岩がゴロゴロした道を登り下りする。

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登ってくる人にあいさつすると、「雷鳥がいますよ!」と言われ、指差された方を見ると、いました。雷鳥が、首をキョロキョロさせながらのんびりしている。地図を見るとこの辺りは「雷鳥坂」。岩ばっかりだけど、雷鳥にとっては過ごしやすい環境なのだろうか。

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小さな雪渓を渡って、白馬大池山荘に到着。池というより、湖のような大きな池のそばにある山荘はとても気持ちいい。朝食はここで作って食べることにする。メニューは棒ラーメン。強風の中、バーナーにがんばってもらってすぐ完成。具は魚肉ソーセージと味噌汁の具。ジャンクな味も山ではごちそう。食後にもういっちょバーナーにがんばってもらって、絶景の中カフェオレを一杯飲んで出発。小屋の表示を見ると、栂池のロープウェイも運行しているようだ。台風がそれたんだな。ツイてる。

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池を右手に、雪原を左手に、出発。ここから乗鞍は、今回の山行での最後の登り。とにかく岩がゴツく、登りも下りもハード。昨日の晩ご飯のときにぬいぐるみカップルがビビっていたのはきっとここだ。岩を終えたら、最後の雪原。ロープをつかみながら、慎重に、慎重に。雪原のあとは、ドロドロの道。やがて天狗原に入りしばらく木道を歩く。木道が終わり、樹林帯を抜けると、栂池山荘。一気にムードは観光地。カフェがあり、お土産売り場も。靴の泥を落とし、さるなしソフトでホッと一息ついて、ロープウェイ、ゴンドラを乗り継いて栂池高原へ。ここまで来ると完全に下界。暑い。

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白馬八方まで戻るバスに乗るべくバス停に向かうと、同じく八方に向かうというおばさまに会い「もうタクっちゃおう」ということになり、タクシーで八方へ。 八方温泉で降ろしてもらい、温泉につかったあと、コーヒー牛乳をゴクっとやって、うどんをズズッと。

コーヒー牛乳は 松田乳業のもので「富より健康」というコピーが書かれている。うむ、名言。名言は調味料のようにおいしさを引き立てるのだろうか。特別にありがたく感じた。うどんはつるつるの喉越し。店の人に聞くと、うどんに温泉成分が練りこんであるらしい。そってどうなんだろうと思ったが、おいしいから、まあいいか。

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短かったけど、たくさんの思い出が詰まった白馬を後にし、東京まで帰ってきてしまったのでした。