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おばあちゃん、お元気で。


「男まさりの働き者だった」。
お通夜の前、おばさんが話していた。


亡くなったのは、おばあちゃん。
享年90歳。


いろいろな人の話を聞くと、
大変な苦労人だったようだ。


夫であるおじいちゃんは戦争のあともシベリアに抑留。
帰ってきたのは戦争が終わって4年後のことだった。
それから3人の子どもを育てるために、とにかく働いた。
昼は勤めに出て、朝と夕は農作業という毎日。


そんな生活でも、
おばあちゃんはひたすら明るかった。あたたかかった。
分け隔てなく愛情をもって周りの人に接していたようだ。
お葬式のときには、「お母さんにはよくしてもらいました」、
「よくご飯を食べさせてもらいました」という声を聞いた。


私の記憶のなかのおばあちゃんは、
とにかく声が大きかった。いや、うるさかった。
濃い顔で、太った体で、大きな声のおばあちゃん。
小さいころは「太ったおばあちゃん」って言ってたっけ。

おじいちゃんは去年の3月に亡くなったので、
それから1年と数か月でおばちゃんも亡くしたことになる。


でも、その葬儀は悲しいだけじゃなかった。
あちこちで暮らしている親戚たちと久しぶりに
ゆっくり話ができたのはうれしかった。
元気だったころ、孫がたくさん家にきたとき、
おばあちゃんはうれしそうに言っていた。
「孫がまごまごして大変じゃわい」。


久しぶりにみんなで集まってやかましくしている私たちを見て、
おばあちゃんはきっとガハハと笑っているにちがいない。


おばあちゃん、残された家族はみんな、
これからも仲よく、やかましくやっていきます。
「いんなげな(※)」と笑いながら、
空から見守っていてくださいね。
あちらでも、お元気で。


※いんなげな…変、おかしい、という意味の方言。


おばあちゃんの家は、島根県邑南町の旧羽須美村。
空の色、空気の匂い、水が本当に美しいところなんです。

でも、人がどんどん少なくなっていて、
あちこちが草におおわれつつあります。


最寄りの駅、口羽は、一両編成のディーゼル三江線」の無人駅。
ここから歩いて30分のところにあります。


お通夜、お葬式のときのお料理は本格的な精進料理。
地域のおばさんたちが、集会所でつくってくれます。




なによりのご馳走は、地元で獲れる野菜や果物。
なんにもないけど、幸せはいっぱいです。