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 2006穂高縦走(6)


「前穂…遠いなあ。どうする?」


迷ったら、行かない。
本来、3000メートル級の山においては、
そっちの選択の方が正しいだろう。


しかし、アホなことに、
そのときはあまりよく考えていなかった。
目の前に山がある。
じゃあ、行こうよ。
そのとき私はそんな顔をしていたのだろう。


その表情をみてとった友達は、
慎重モードから一転、
笑顔で「行こうか」。


二人のパーティというのは、
そんなもんだ。
会話が少ないぶん、
気分で走ってしまう。


岩がゴロゴロしている吊尾根を経て、
上高地と前穂高に分かれる分岐、
紀美子平に着く。


雲間が晴れると、
遠くに上高地が見える。
吊尾根が大変だったので、
このまま降りることができれば、
なんて思ってしまう。


紀美子平から前穂高まで、
地図では30分の直登。
イッキに攻めて、終らせよう。
岩にとりつき、夢中で登る。
かなり登ったなあ、というところで、
ゾッと血の気が引く。


上、下、右、左、
どこを踏んでも石がグラっと動く。
見渡してみても、
「○」や「×」といった、
道を示すペンキの印が見当たらない。
ここは、道じゃない。


急な岩場に座り込んでいると、
30メートル先くらいのところに、
人がいる。
そして、こちらを見て目をむいている。
「そっち、道じゃないですよ。」
やっぱり。


岩もろとも崩れ落ちることのないよう、
慎重に、慎重に横移動をし、
なんとか道(といっても、やっぱり岩)に戻る。


青い顔のまま、
チョロチョロっと登り、
ようやく前穂高山頂へ。


いやあ、大変だったなあ。
という感慨と、明日でも良かったのになあ、
という後悔が混じり合った、
しょっぱい山頂になってしまった。


<つづく>