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 2006穂高縦走(4)


8月19日、3時起床。
星空が楽しみなので、すぐに起きる。


穂高をピストンするか、
荷物を背負ったまま越えるか。
結論は、もう決まっていた。


体調がすこぶる良いので、
荷物を背負ったまま、北穂高を越える。
荷物を整理し直して、3:30出発。


外に出ると、薄曇り。
でも、星はとてもきれい。
流れ星も、サーッと流れる。
真っ暗だけど、まったく怖くない。
たくさんの星と三日月の下、
ヘッドランプをつけて歩く。
夜の岩場は道に迷いやすいので慎重に登る。


南稜のクサリ場にさしかかる辺りで、
夜が明けてきた。
何度経験しても感動する瞬間だ。


そして5:30、北穂高岳山頂。
ご来光を浴び、山とともに赤く染まる。
穂高、前穂高槍ヶ岳を臨む
素晴らしい景色を眺めながら、
パンをかじる。


生まれたての太陽の光で
頭も体も心も覚醒したところで、
危なげな涸沢岳穂高岳山荘の道に足を踏み出す。


改めて地図を見ると、
「危険マーク」だけでなく、
「浮石、落石注意」「ハシゴと長いクサリ」
「尾根の踏み跡に迷い込まないよう」
「クサリ、ルンゼ状」など、
激しい言葉が赤字でいくつも書いてある。


小屋で話したオバハンは
槍、劔に登ったことあるんだったら平気、
と言っていたが、油断は禁物。
慎重に、慎重に歩く。


途中、重力に逆らって
腕と足の力だけで移動しないと
いけないところがいくつかある。
力を緩めればすぐに谷に落ちることができる。
死ねる。


生きた心地がしないまま歩き続けて、
8:00穂高岳山荘到着。
慎重に歩いたつもりだったんだけれども、
地図上のコースタイムの半分くらいで着いたことになる。
といっても、必死だったので時間の感覚は全くない。
久しぶりに死を意識した1時間だった。


死とお近づきになると、
息をしていることだけでも
とても幸せなことのように思えるから不思議だ。
どんな人でもいい人に見えるから不思議だ。


穂高岳山荘が、天国のように思えた。
実際、涸沢カールを眼下に臨む景色は
絶景なんだけれども。


<つづく>